横浜サワディーブリッジコラム ~接客の現場から~

黒スーツという常識を破ってホンワカ?

商工会議所などでセミナー講師を務めた最初の頃は、黒スーツ着用が常識だと思っていました。しかし、受講者の皆さまと心の距離が離れているのではないかと気づいたのです。そもそもセミナーの受講者は、お店で働く方。店員さんで黒スーツ着用の方は、どのくらいいらっしゃるのでしょうか?

それ以来、セミナーでは三角襟のシャツ、黒または紺のパンツ、エプロンを着用してお話しています。印象が「カチカチ」から「ホンワカ」になったようで、受講者の皆さまから気軽に話しかけてくださるようになりました。常識や既成概念を疑ってみるのも有りですね。

「因果応報」、「人を呪わば穴二つ」を胸に

日本でも世界でも社会問題になっている「ハラスメント」。タイでも、企業の日本人社員がタイ人社員に罵声をあびせるのを目にしました。私自身も職場の先輩からパワハラ、お客様からのカスハラを受けたことがあります。

「ハラスメント」とは、マナーを欠き土足で相手の心に踏み入り、アイデンティティーを否定し生きることを脅かす行為です。自分が優位に立つあまり、やってしまうのだと思いますが、結局は加害者側も自分の言葉や行いに苦しめられるようです。

さらに恐ろしいのは、人間である以上誰もが「やってしまう」要素を持っているということです。常に「因果応報」、「人を呪わば穴二つ」を胸に生きて行こうと思います。

【参考サイト】あかるい職場応援団(厚生労働省)
【参考記事】⇒カスハラ対策、クレーム対応に必要な基礎知識~海外の例にも学ぼう

手書きメモのすごいところ

私はクレーム対応した時に業務上の証拠として、お客様のお話をメモに残していました。それ以来「手書きメモが」習慣づくようになりました。

実は以前職場でパワハラを受けたときにも、メモに残しました。「●月●日(木) 10:13 ▲▲さんに『そこ、どいて!』と大声で脅すような口調で言われた」のように、日時、事実を淡々と手書きします。感情、悪口、作り話は事実を脚色してしまうので、一切書きません。

手書きによって、起きたことを客観視でき解決策も出てきます。スマホやパソコン上の文字と違い、自分の筆跡は世界にただ一つ。「あれ?」と思ったことは手書きメモで証拠に残し、心を落ち着かせましょう。いつか役に立つときがくるかもしれません。

「言い返す」のではなく、まずは「オウム返し」で無理をせずに

「英語は聞けるけど、言い返せない」と言う方は、無理に別の表現で返そうとしなくてもいいと思います。

日本語・英語の接客時、私はまず「オウム返し」をして、理解が正しいかを確認するようにしています。「オウム返し」の間に、頭の中を整理でき落ち着く時間がとれるからです。

以前、総合案内の仕事をしていたとき、60代くらいの女性が「ここはゴチャゴチャしていて全然分からないじゃない!〇〇デパートどこよ!」とお怒り丸出しで聞いて来られました。私は間髪入れずに「〇〇デパートでございますね。10メートルほど先でございます。お気をつけて行ってらっしゃいませ」と明るく響く声でご案内。「オウム返しに倍返し」という、歴史に残る慇懃無礼な対応でした。

英語がしゃべれないのなら、「アンチョコ」を用意しよう

「英語がペラぺラでなければ接客なんて無理」と思っている方は多いと思います。ペラペラでなくても話せた方が楽ですが、話せない人は「アンチョコ」を準備すればOKです。現役店員でもある私のアンチョコをご覧ください。常に現場で持ち歩いています。

英語がすぐに出て来なくても、アンチョコですぐに調べられるようにしておくと非常に楽です。私も同様の時があり、見ながら答えたら外国人のお客様に感謝されたことがあります。

アンチョコ作りは、英語と専門分野の勉強にもなるのでおすすめです。これで自分のキャリアに箔をつけ、「英語を抜いた状態でも必要とされる人」になれたらと思います。

英文法の間違いよりも怖いものの話

英語というと学校の○×で評価された苦い思い出のせいなのか、「英文法の間違い」を気にされる方が多いです。英語の文法は確かに大切です。英語の場合、現在、過去、未来それぞれ動詞の形が変わるので、文法が分からなければ、それぞれの時の話ができないし、わからないからです。

でも、接客の現場において英文法の間違いよりももっと恐ろしいものの正体を知っていますか?それは数字です。金額、個数、階、日にち、時刻、電話番号、部屋番号など間違えたらどうなるか、ご想像つきますよね。やれやれ、プロの世界は厳しいものですね。

相手との心理的な距離感、生身のコミュニケーション

マスク着用などで感染症予防は必要ですが、接客の現場ではお客様との距離が1m以内、大方60~75cmで会話することが多くなります。お客様とのちょうどいい距離感を保ちながらお手伝いする必要があるのです。

接客業でなくても、海外旅行先などで英会話をしたい方は、日本語での生活でも、生身のコミュニケーションを意識的にするようにしましょう。テクノロジーが発展すると、生身の人間とのふれあいが確実に減り、相手との心理的な距離感がつかみにくくなると考えます。現在はオンラインでやれることが多くなってきましたが、海外旅行先で会話する現地のホテルやお店のスタッフは、生身の人間であることをお忘れなく。

「英語はうまくなってから使おう」と考えていませんか?

日本で教育を受けた人の場合、受験英語の影響が大きいと考えます。「試験」という一世一代の大舞台に備え、英語構文やイディオムを叩き込み、膨大なエネルギー、時間、お金も注ぐことになります。このような経験をしてしまうと、「英語はうまくなってから使おう」という考えに至るのは自然なのかもしれませんが、私は異を唱えたいと思います。

本来英語は言語の一つです。言語は自分の意思を伝えるのに必要だから使うものです。だからもっと身近であっていいはずです。接客業などのビジネス、SNS、海外旅行、洋楽、海外映画・ドラマでも、英語を始めるきっかけは何でも良いのです。自分のお財布や時間と相談すれば、気軽に始められます。

確かに、言語としての英語は特に合格証書もないので挫折しやすいです。だから英語を勉強し始めた時点で短い言葉から使い、「いつになったらできるようになる?」という閉塞感から、ちょいちょい抜けだしましょう。英語を学びつつ、時に実践の場で話し、書き、読み、聞き、多様な文化と接しながら生きる方がきっと楽しいと思います。

【参考記事】
⇒受験英語ではなく、実践に役立つ英語で何かしたい人へ

ビジネスで使う英語でも、いったい何から勉強すれば・・・?

幕末に英語を習得した長崎通詞たちの話をしたいと思います。

鎖国時代の1848年、日本に憧れたアメリカ人青年ラナルド・マクドナルドが単身ボートで利尻島に上陸後、長崎の座敷牢に収容されました。その頃、長崎に起きたイギリス船の武力行使により、英語の必要性を感じていた幕府は、長崎のオランダ語通詞たちに英語の習得を命じました。座敷牢にいながら品行方正で日本語を覚えようとしていたラナルドに通詞たちが心を開き、英語の稽古を申し出ました。

まず通詞たちが知りたがったのは、「船名は?」、「乗組員の数は?」といった質問のしかた。arrive「着く」、governor「奉行」という単語も教わりました。まさに「外国船入港時のやり取りに必要な英会話フレーズと英単語」だったのです。

英会話力不足によって外国と紛争になりかねない、危険な通詞の仕事。「英語は何から勉強すればいいのか?」は、「何のために英語が必要かを見極めること」によって分かることだと、通詞たちに教わったような気がします。

【参考記事】
⇒英語の先生には得意分野があります

【参考図書】
ラナルド・マクドナルド
鎖国下の日本に密入国し、日本で最初の英語教師となったアメリカ人の物語 (今西 佑子著 文芸社)

海の祭礼(吉村 昭著 文春文庫)

情報共有・リスク管理

今の多様性あふれる時代、接客、おもてなしに役立つ国や公的機関等の情報を共有します。教室ブログのリスク管理記事一覧もご参考ください。

■ 観光庁 外国人旅行者コールセンター(Japan Visitor Hotline)の案内
24時間、365日、英語、韓国語、中国で問い合わせに対応しています。緊急災害時だけでなく、一般観光の問い合わせも受けています。


■ 観光庁 外国人旅行者向けコールセンターのチラシ(PDF)
英語、韓国語、中国語で表記。館内、店内に貼れるようになっています。


■ 観光庁 免税店になろう
インバウンド対策で免税販売をお考えの方、こちらで情報を入手できます。


■ 観光庁 「ムスリム対応おもてなしガイドブック」
2018年に増補版発行。基礎知識編、実践編、問い合わせ対応文例、対応事例を以下のページからダウンロードできます。


■ 観光庁 「飲食店などにおける外国人ベジタリアン、ヴィーガン対応ガイド」(PDF)
2020年4月発行。ベジタリアン、ヴィーガンの基礎知識をはじめ、レストランや宿泊施設での取り組み事例も載っています。


■ 外務省 海外安全情報配信サービス「たびレジ」
出張・旅行中も、現地の日本大使館や領事館から安全情報が無料で入手できます。


■ 法務省 多様な性について考えよう
これからの時代、お客様、従業員の中にも、男女以外の性の方がいることを知っていく必要があります。


■ 総務省 SNS利用上の注意点
一度SNSにアップしたものは、全世界に広まり、半永久的に残ります。お店・施設等からの情報発信の前にプライバシー設定など、一度確認しましょう。


■ ミプロ(一般財団法人対日貿易投資交流促進協会)
海外輸入品のお店を開く方、相談窓口、セミナーもあります。

英語手書きPOP

英語手書きPOP

店内や店頭で見かける、商品周りに置いてある広告をPOPと言います。英語POPはその英語版です。
横浜サワディーブリッジでは、 インバウンド支援の一環として「手書き英語POP講座」を開催しています。手書き英語POPを使って、世界のお客様をお迎えする準備をしましょう!

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